= 第84話から第87話までの担当者紹介! =


みなさんはじめまして! 某外資系航空会社でクルーをしておりますトシと申します。
エッセイを書かせていただくのははじめてですが、5年半以上に渡る海外ベースの
生活を通して普段考えていること、同僚や他社の友人から聞いた情報など
紹介させていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 

第84話 クルーの健康について -  3 Oct .2002-


日本を離れ、外資系航空会社に勤務してはや5年半以上。
いまだにこの生活が楽しくてやめられない男性クルーですが、
それでもこの仕事は本当に身体によくないと改めて実感
させられることがよくあります。

まず第一に怪我。華やかで優雅そうなイメージとはうらはらに、
機内でクルーが怪我をする件数が実は非常に多いということを
みなさんはご存知でしょうか? それというのも、フライト中には
予期しない揺れ(タービュランス)というものが時折発生するからです。
突然の揺れによって転倒したり、身体の一部をどこかにぶつけたりして
怪我をする例が、私どもの会社でも毎年数百件発生するそうです。
中には骨折して数週間もの病欠を取った人もいるとか。

幸いにも私はそこまでひどい揺れを経験したことはありませんが、
経験上、キャビンの一番後ろ付近が最も揺れが大きくなるため、
悪天候のときに後方ギャレーで働く際にはいつも注意しています。
怪我の他、意外に多いのがやけどです。食事や飲み物のサービスの時に、
オーブンや熱湯を扱うからです。特にファースト・ビジネスの
ギャレー担当クルーに多いらしいです。

また女性のクルーの方には特に、腰痛が職業病として有名ですよね。
会社によって違うと思いますが、ハイヒールをはかなければならなかったり、
高いところのものを取り出したり床においてあるものを持ち上げたり
することが多いため、この仕事は常に腰に大きな負担がかかります。
自分は男性なのでまだましなのかもしれませんが、やはり予防には
普段からトレーニングや運動をして腰の周囲の筋肉を鍛えておくことと、
思いものを持ち上げたりカートを押したりするときには常に姿勢に
気をつける(腰を曲げずにひざの力を利用する)ということが
一番ではないでしょうか。

機内の空気も身体にいいとは決して言えません。
飛行機のの空調設備にはフィルターがついているとはいえ、
閉じられた空間であるため、どうしても床のカーペットや毛布
からまき上がったほこりで空気がよごれやすくなるものです。
照明が暗い時に窓から差し込んだ光を見ると、いかに機内の
空気がほこりっぽいかよくわかります。それに機内の空気は
大変乾燥しているため、ノドや鼻に非常に悪く、風邪を引いて
いるときに飛行機に乗ると、たとえ悪くならなくてもよくなることは
絶対にありません。

地上で普通の仕事をしているときは、少々の風邪なら働きながら
直すことも可能でしょうけど、この仕事をしていると休みの間に
直りかけても飛ぶとすぐ悪化する、の繰り返しで、非常に長引く
ことがあります。ことに耳や鼻が詰まっているときは、
気圧の変化に対応できず恐ろしいことになります。
特に降下のとき、つまり気圧が高くなるときにひどいようです。
この時に耳が抜けないと、大のオトナでも涙が出るほど痛くなるとか。
最悪の場合は鼓膜が破れることもあるらしいので、お客さんとして
乗る場合でも風邪を引いているときは注意が必要です。

更に、最近航空業界で話題になっているのが、
宇宙から降り注ぐ放射線のことです。
飛行機は高度の高いところを飛ぶので、大気圏でさえぎられる
放射線を、地上にいる人より多く浴びるらしいのです。
聞いた話では、ヨーロッパ・アメリカ間の大西洋路線片道で
レントゲン写真2枚分、また北極に近い場所を通る香港・ニューヨーク
のような超長距離路線では片道だけでレントゲン写真5枚分
程度の放射能を浴びるとか。
これは腰痛や気管の不調などと違ってすぐに自覚できず、
数年後・数十年後になってようやく蓄積された影響が
出るものですから、恐ろしいですよね。

なんだかとても否定的なことばかりを書き連ねてしまいました。
クルーという仕事は喜びも多く、基本的に楽しいものなのですが、
でもそれじゃあ健康にいいことは?と聞かれたら、少なくとも
自分は何も思い浮かびません。世界各地でその土地のおいしい
ものを食べられるということぐらいでしょうか(笑)。
そもそも健康にいい仕事なんてものがあるのかどうかわかりませんが、
その中でも飛行機に乗ってクルーとして働くことは特に健康面での
負担が大きいのではないでしょうか。
安全かつ快適に空の上で働くためには、普段から健康に留意
することがつくづく大切であると思います。
 


 

第85話 クルーと睡眠について -  10 Oct.2002 -



前回はクルーの健康についていろいろ書かせて
いただきましたが、身体の健康だけでなく精神的な
健康にも大きな影響を与えるのが睡眠です。

睡眠が不足すると抵抗力が衰えて病気をしやすく
なるだけでなく、この仕事に必須な精神的忍耐力も失われて
ちょっとしたことでイライラしたり、忘れっぽくなったりして、
仕事をうまくこなせなくなります。しかしながら、クルーは
あちこちを飛びまわり、眠るべき時間にも起きていることを
要求されることがあるため、定期的に一定の睡眠を確保
するのがときに困難であります。
睡眠は、クルーにとって永遠の、そしてもっとも
重要な課題の一つであるといえるでしょう。

私どもの会社では、ヨーロッパやオーストラリア行き等の
長距離便は、出発が深夜に集中しています。
最初のミールサービスが終わったあと、着陸前のサービス
まで2グループに分かれて交代で休憩(仮眠)を取るのですが、
自分の順番が来るまで起きていないといけません。
そのため、フライト前に十分な睡眠を確保しておく必要があります。
その方法は、人によって違うと思いますが、私は前夜早く寝て当日早起きし、
昼食前にプールで1時間ほど泳いだりします。そうすると昼食後に眠たく
なって2〜3時間昼寝が出来ます。実はこのやり方は相撲取りの
朝稽古と昼寝のパターンに似ているため、太りやすくなるという
困った副作用もありますが、今のところ最も自分にあった、
睡眠の調整方法だと思います。

それではステイ先ではどのようにするか。
たとえ時差の少ない場所を飛ぶときでも、長距離便では
本来寝る時間に起きて仕事をしないといけないものですから、
そのあとで睡眠のリズムが狂ったりすることがよくあります。
また、時間帯をさかのぼる場合(つまり西に行く場合)よりも
時間帯をさきに進む場合(東方向)の方が、一般的につらいようです。
誰でも眠たいのを我慢するのは比較的難しくありませんが、
眠たくないのに眠るのはほとんど不可能ですから…
ヨーロッパでは平気なのに、アメリカでは夜眠れなかったり、
逆に昼間でも常に眠気を感じてつらい、という話をよく耳にします。

私は世界中どこでも暗くなったら寝て明るくなったら起きるタイプ
なので、アメリカでも時差ぼけで苦しんだ経験があまりないのですが、
たまにメラトニンというサプリメントを服用することがあります。
これは人体中にも存在する睡眠を促すホルモンの一種らしく、
日本では私の知っている限りインターネット販売等でなければ
入手できないようですが、海外では普通に薬局やサプリメント
ショップで見かけることができます。
自分の場合はこれを飲むと朝までぐっすり、目覚めたあとはすっきりと
1日を過ごすことが出来ます。副作用は今まで報告されていないと
いうことですが、長期間に渡って服用した場合に身体に与える影響など、
まだよくわかっていないらしいので、あくまでも長距離便のステイの
時にしか使用しないようにしています。

さらに、ステイ中で昼間に眠くて仕様がない場合は、
少々疲れていてもホテルのジムで無理やり軽い運動をします。
これはトレーニングやサプリメントに詳しい友人からの受け売りですが、
運動をすると心拍数が上がり、興奮作用のあるアドレナリンと
いう物質が分泌されるため目がさえるのだとか。逆に夜寝る前に
トレーニングをして、かえって眠れなくなったこともありますが。
また逆に眠れない時は、日光浴が一番いいらしいです。
日光浴には、夜間に脳内の松果体という部分からメラトニンが
分泌されるのを促す効果があるのだそうです。
これも人からの聞きかじりなので詳しいことはわかりません。
でも昼間プールやビーチで泳いだあとに、夜フーッと眠たくなったことは、
みなさん経験されているのではないでしょうか。
これは時差ぼけにも有効なようです。

…などなど、以上が私のクルー生活の中で自分なりに
編み出した睡眠の調整方法です。他のクルーのみなさんには、
もっといい別の方法をご存じな方もいらっしゃるでしょうから、
ぜひ機会がありましたら教えていただければ幸いです。
御互いに情報交換をして、クルーという仕事を健康的に
楽しく続けて行きましょう!



 

第86話 クルーの怖い話 -  17 Oct.2002 -



深夜の長距離便。離陸後のミールサービスが終わり、
キャビンの照明を暗くして、お客様も皆お休みになっています。

クルーも2グループに分かれて交代で休憩を取るわけですが、
その間起きているグループはカーテンを閉めてギャレーの中で
サービスを続けます。 しかし、お客様の呼び出しベルもほとんど
鳴らず、時たま飲み物のサービスに行くほかは手持ち無沙汰に
感じられることがあります。

そんな時、ギャレーの中では滞在先での予定や、
買い物の計画などの話に花が咲いたりするのですが、
クルー自身が経験した、あるいは他のクルーから聞いた
怖い話で盛り上がることもあります。
今回は、クルー生活の中で私が聞いたり経験したりした
怖い話を、ご紹介したいと思います。

長距離便用の機材には、クルーレストエリアといって、
クルーが横になって休憩できる寝台ベッドをしつらえた
小さな部屋があります。
ある種の機材では、その部屋はキャビン中央の床下、
つまり貨物室と隣り合わせています。一口に飛行機の
貨物といっても、時にいろんなものを運ぶことがあるようです。

ある時、クルーが休憩のためにそのレストエリアに下りていきました。
彼女が最初だったために他には誰もいないはずでした。しかし、
そのベッドの一つに、金髪の女性が寝ていることに気づきました。
レストエリアは、非常用設備の位置、緊急時の脱出方法など、
訓練を受けたクルーしか使用してはいけないことになっています。
彼女は、その女性を起こしてその旨を伝えました。
「わかりましたわ…それでは私、主人のところに戻ります」

その女性は階段を上ってキャビンに出ていかれました。
しかしそのクルーは、その女性がいったいいつどうやって
この部屋に入ってきたのだろうと、不審に思ったため、
もう一度キャビンに出て探して見ましたが、見当たりません。
そこでその方のご主人とおぼしき西洋人の男性にたずねて見ました。

Crew : 「失礼いたします。お客様は奥さまとご一緒ですか?」
男性 : 「ええ、確かにそうですが…」

Crew : 「奥さまは今どちらにおいでですか?」
男性 : 「貨物室の中ですよ」

Crew :「え? どういうことでしょうか」
男性 :「彼女は滞在中になくなったので、その遺体を
         この飛行機で本国に運んでいるところなのです…」

これはいったい誰が経験した話なのか、
あるいはそもそも本当なのかどうかわからないのですが、
しばらくこの話題がクルーの間でもちきりとなり、
「私は絶対一人ではレストエリアに降りていかない!」
というクルーが多かったのです。

また、クルーの生活は半分が世界各国のホテル
住まいであるため、その滞在先の部屋でいろんな
ものを見た、経験したという話も後をたちません。
N市のNホテルでは、バスルームのトイレットロールが
ひとりでにカラカラと回っただの、A市のSホテルでは
シャワーが勝手に開いてお湯が出だしただの、
F市のHホテルでは同じ部屋に違う日程で滞在した
2人のクルーが同じものを見ただのと…。
私自身は、小さな頃から霊感やシックス・センスなどとは
まったく無縁にすごしてきたのですが、そのような私でも、
今の仕事についてから、とても恐ろしくて不可解な
経験をしたことがあります。

そのホテルは、ある大都市の都心にあり、
有名なチェーンではあるけど古い建物でした。
そのホテルの19階の一室に私は滞在しておりました。
何時ごろであったかはわかりません。
深夜、それまで眠っていた私は、ある気配に目を覚ましました。
ドアの方に足を向けて、窓際に枕を置いて寝ていたのですが、
ドアが開いて中に誰かが入ってきたような音が聞こえたのです。

もちろんそんなことが可能であるはずはありません。
中からきちんとロックをし、チェーンもかけていたのですから。
しかしその「誰か」は、何語かわからない言葉でブツブツブツ…
とつぶやきながら、私の寝ているベッドの方へゆっくりと、
近づいてきたのでした。

その時点ではもう、私は金縛りにあって身体を
動かすことはおろか、声を出すことも出来ませんでした。
そしてその「誰か」はいよいよ私の枕元に立って、
寝ている私の耳元でブツブツブツ…とつぶやいているのでした。
何をつぶやいているのかはまったく聞きとることが出来ませんでしたが、
それでも声の質からその「誰か」は男性であることがわかりました。

ヤバイ! どうしよう! こういう時にはお経を…
マカハンニャハラミッタ…ええと次なんやったっけ? 
などと頭の中はパニック状態でしたが、それでも
金縛りのときは指を動かせば解けるという話を思い出し、
なんとか指を動かして見たのでした。
すると、そのとおり、フッと身体が楽になり
ブツブツも聞こえなくなったのでした。

しかし、あまりの恐ろしさのために、目を開けて部屋を
見まわそうともせず、毛布を上にかぶってそのまま
寝てしまおうとしたのでした。するとそのとたん、
今度は毛布の上から「誰か」がフワッと覆いかぶさってきて、
再び身体が動かなくなりました。
そこで私は、勇気を振り絞って恐る恐る目を開けて見ました。
すると、私が上にかぶっている毛布の端から、人間の両手の
シルエットが、暗い部屋の中でぼんやりと見えたのでした……

私がその時見たのが何であったのか、今もってわかりません。
そのあとどうなったかの記憶も定かでなく、フッと眠りに落ちて
目が覚めたら朝になっていたのでした。
そして空港へと向かうバスの中で、一緒に乗務していた
クルーにその私の不思議な体験を話しました。
みんな大騒ぎで、「それ何号室?」と私に聞いてくるのでした。
「19階の…」と答えると、あるクルーが興味深い事実を話してくれました。

そのホテルの19階には、以前からクルーの間で「出る」と
評判の一室があるのでした。その部屋は私が滞在した部屋では
ありませんでしたが、奇しくも廊下を隔てて反対側、ちょうど
ドアとドアが向き合うところに位置していた一室なのでした。
もしかしたら、その向かい側の部屋から例の「誰か」は
私の部屋にやってきたのかもしれません。

みなさんも、旅先や乗務先でホテルに滞在されるときは
お気を付けください。深夜、何か得体の知れないものが
みなさんの部屋に現れるかもしれませんから…。




 

第87話 日本人クルーとして -  24 Oct.2002 -



日本に乗り入れる外資系航空会社のほとんどは、
日本人クルーを採用しています。 それは、航空会社
にとって日本市場は非常に魅力的なマーケットであるため、
日本人特有の言語・心理・習慣等を理解した乗務員によって、
日本人乗客によりよいサービスをしようという
航空会社側の配慮によるものです。

しかし、これが私たちにはなかなか一筋縄ではいきません。
日本人のお客様との対応は、日本人クルーにとっては大変
難しい課題のひとつなのではないでしょうか。

外国人クルーには、日本人のお客様は押しなべて
評判がいいように思われます。「とても礼儀正しい」
「お手洗いの使い方や食事の仕方、キャビンの状態が
とてもきちんとしている」「わがままも言わず静か」などなど…。
確かにそのとおりの点も多いでしょうが、私と同様外資系
航空会社に勤務する日本人クルーにとっては、
若干首を傾げたくなる点もあるのではないでしょうか。

外国人クルーにとって日本人乗客がおとなしいと
感じられる原因は、第一に言語の壁にあるのでしょう。
そのおかげで私たちも今の職にありつけたのですから
文句は言えませんが、しかしそのせいでお客様の不満
苦情はすべて日本人クルーのほうに来ます。
それがたとえ外国人クルーの不手際によるものであったとしても。

これは私たちにとってはとても理不尽に感じられるものです。
「自分のせいじゃないのになぜ謝らないといけないんだろう」と。
しかし、お客様は決して私たち個人に対して怒っているのではなく、
私たちが着ているユニフォームに対して怒っているのであり、
私たちも個人としてお詫びするのではなく会社のユニフォーム
を着た人間として謝らなければならないのです。

また、日本には「お客様は神様です」という言葉があります。
つまりお客様の位置はサービス提供者より絶対的に上で、
お客様が黒といえば白も黒にならなければならない、
というような考え方が根強くあるようです。
それは、日本以外のほとんどの国では、あまり通用しません。
もちろん、どの国においてもお客様は大事にしますが、
サービスには範囲というものがあり、お客様の要求には
なんでもかんでも応えるわけではない、という根本的な
考え方の違いがあるのです。

これのいい例が、荷物の上げ下ろしでしょう。
お客様の中には、客がいったん機内に乗り込んだら
クルーはその荷物を運んで、客は手ぶらで席に着くのが
航空会社のサービスだと思っている方がいらっしゃいます。
しかし、私どもの会社では、お客様の手荷物は、
お客様ご自身で上げ下ろししてもらうようにしなさい、
と教えられています。クルーがお客様全員のお荷物を
代わって上げ下ろししていたのでは、腰に負担がかかりすぎて
万一緊急事態が発生したときに影響が出ると考えられるからです。
そこで私たちは、お客様にサボっていると思われることなく、
かつ自分の体に負担のかからないように荷物の上げ下ろしを
お手伝いしなければなりません。これにはなかなかコツがいります。

さらに、日本人のお客様が持つ機内サービスに対する期待は、
相当高いものです。たとえ団体ツアー料金のエコノミークラス
であっても、高級レストラン並みのサービスを期待されるでしょう。
これには、日本人にとって海外に行くということは、まだまだ
大層な行動である、という意識があるのかもしれません。
したがって、飛行機は電車やバスとは違って特別な乗り物であり、
その飛行機に乗っている自分は特別なのだ、と。

しかし、路線によってはほとんど電車やバスのように数多くの
便があって競争が激しく、かつ正規料金で旅行されるお客様など
ほとんどいらっしゃらない昨今では、どうしても収益率の低い
エコノミークラスからコストを切り詰めないといけないというのが
航空会社側の本音です。 そのような「量」の制限の中で、
実際にお客様と接して高い「質」を感じさせなければいけない
のがクルーの役目なのです。

また、飛行機はもっとも安全上・保安上の制約が多い乗り物です。
大多数のお客様にはそのことはあまり意識されていないでしょう。
ほかの乗り物やレストランではお客の自由にできるのに、
なぜ飛行機では荷物をここに置くなとか、シートベルトを締めろ
だとか指図されないといけないのか、となるわけです。
しかし、キャビンクルーは機内サービスよりも、機内の安全を
守る保安要員としての役割が第一であり、お客様にそのことを
理解していただくまで根気よく説明しなければなりません。

最後に、これは私たち自身の問題なのですが、長い間海外
ベースで日本から離れて暮らしていると、どうしても日本人的
感覚が薄れて来がちになります。
ことに、日常生活で敬語を使う機会がほとんどないので、
いざ機内で日本のお客様に話しかけようというときに、
とてもおかしな間違った表現を使ってしまうことがあります。
海外で暮らしているとはいえ、日本人クルーとして勤める以上、
日本人特有の感覚や言葉はいつも磨きをかけていないといけないでしょう。

以上、私が海外ベースの日本人クルーとして働いている中で、
普段考えていることをあげてみました。文化の違いやさまざまな
制約と直面しながら、日本人のお客様に満足していただくのは
並大抵のことではありません。 しかし、日本人のお客は難しい、
嫌いだなどと否定的に考えず、なぜ日本人である自分が
ここで働いているかという原点に戻って、日本や日本人という
ものを理解して働いていくことが必要なのだと思います。
それはとりもなおさず、同じく日本人として生まれてきた自分
自身を理解し、自らの成長のチャンスとすることにもつながるのでしょう。

…と書くのは簡単ですが、私がそこまでデキた人間に
なるにはまだまだ時間がかかりそうです(笑)。

今回が、私の担当するエッセイの最終分です。
なんとか締め切りに間に合った(?)ようで、
ほっとしています。 人前に出す文章を書くのは
久しぶりのことでしたし、少し緊張もしましたが、
思いのほか楽しませていただきました。
ただ、わかりにくい箇所や誤解を生みかねない
表現がなかったらよいのだが、と思っております。

最後まで読んでくださったみなさん、どうもありがとうございました。


 

essay@crew-jp.com

 

 


 



Honolulu
( Photo by (c)chiaki )
 






= 第88話から第91話までの担当者紹介! =


初めまして、国内系航空会社で
客室乗務員を致しております麻子と申します。
私もかつてはこちらCREW NETにお世話になっていた
一人ではありますが、この度4回連続でエッセイを
担当させていただくことになりました。
少しでも楽しく、みなさまに興味を持っていただける
お話ができればと思っております。
どうぞ宜しくお願いいたします。
エッセイを担当なさってきた多くの方が
具体的なお話をなさっているので、
今回は感じを変えて私の体験した訓練所通いと
訓練フライトについて短編小説風に書いてみようと思います。



 

第88話 「PART 1」 -  31 Oct.2002 -



 入社式を終えて訓練初日。
客室乗務員の卵にとっては一番目の難関である。
麻子は希望と不安を胸に席に着いた。
目の前には眩いばかりに美しく制服を着こなした教官。
見渡すと颯爽とスーツを着こなす綺麗な同期。
化粧嫌いではないけれど、日頃から採用試験のときのような
気合いの入ったメイクをしたことがなかった。
当然スーツばかり着ていたわけでもない。
でも、これからはこの不慣れなことを日常的にしなくてはいけない。
そして目の前に山積みにされた大量の教科書やマニュアル本。
これらを肩にさげての訓練所通い。毎日、毎日、毎日…。
内定の喜びや憧れもどこへやら、
麻子はこれからの生活がどうなっていくのかと気の遠くなるのを感じた。
ここでどうやって生き延びていくのだろう?
なぜ私はこんな所に来てしまったのだろう?

しかし、入社した以上は辞めない限りこの生活を乗り越え
憧れ(だったはず)のフライト生活に入らなくてはならない。
せめて気合い入りのメイクとスーツを着こなすくらいは
慣れておけば毎朝の一大儀式は省けるのに…。
だが、今さら文句も言ってはいられない。
どうすればうまく乗り越えられるのだろうか?
朝の儀式で早起きしなくてはならないというのに
毎夜遅くまでのこれまた不慣れな勉強は
数百ページにも渡る莫大な暗記事項を網羅しなければならない。
夜更かしはお肌の大敵、
そして睡眠不足は暗記力や集中力の大敵でもある。
悩んだ末にたどり着いた答えは
「完璧に訓練をこなすのは不可能に近いのであれば
せめて真面目に振る舞おう」という健気なものだった。

それからの麻子は頑張った。
講義中、予習復習を少なくするためにとにかく集中して話を聞いた。
出来る限り愛くるしく(!?)熱心な(!?)眼差しで。
避難訓練では全力で走り、大声で叫んだ。
頑張って、頑張って、今まで生きてきた中でも
最高に真面目に頑張った甲斐あってか、特に目立つこともなく
どうにか無事に訓練を終えることができたのであった。

 そしてOJT直前。いよいよ明日は
初フライトというときになって麻子は本当に困った。
なぜなら訓練中、真面目に頑張った割には
訓練内容が完全には頭に入っていなかったからだ。
明日の初フライトでは初ブリーフィング(※)も待ち受けている。
麻子はとにかく少しでも安心できるように
一夜漬けの復習をして明日に挑むことにした。


(つづく)

※ ブリーフィング:フライト前にサービスプランや飛行ルート
         安全確認などを行う打ち合わせのようなもの



 

第89話 「PART 2」 -  7 Nov.2002 -


 
 訓練フライト前夜、麻子はなかなか寝付けなかった。
明日に備えて早く寝なければと思えば思うほど寝付けなかった。
せっかくの泥縄状態の予習も忘れやしないだろうか?
初日早々から遅刻したらどうしよう?
夜中に何度も目を覚ましはしたものの、
無事目覚まし時計とともに飛び起きた。
 
とうとうこの日がやってきたのだ! 初フライト!!!
数週間に及ぶ訓練の賜物か、朝の一大儀式も習慣となりつつあった。
訓練所通いで着慣れたスーツを着て
両手に制服とフライト用ショルダーバックの入った鞄を持って
                           一路空港へ!!!
 
空港の職員通路は安全管理のために迷路のようになっている。
右だっけ? 左だっけ?
ようやくロッカールームにたどり着き、制服着用。
初めて自分の制服に袖を通したとき以上に胸が高鳴った。
忘れ物はナシ。メイクもマニキュアも完璧!
いよいよブリーフィング…と、突然不安が押し寄せてきた。
付け焼き刃な暗記は不安以外の何者でもない。
最後の悪あがきのように復習してみた。
滑り台を出す方法は…、サービスの手順は…。
どんどん時間が過ぎ去っていく。もうダメだ!
麻子は観念して自首、いや出頭した。
 
初フライトに同乗する先輩を捜して
ブリーフィングルームをキョロキョロ。
明らかに挙動不審な真新しい制服を着た麻子を
見かねた先輩が連れに来てくださった。こ、こ、恐そう、、、
見るからに目の据わった姉御を前に麻子は凍り付いてしまった。
後に宿泊先で飲み歩く仲になれる先輩だとは知る由もなく…。
 
初ブリーフィング。
打ち合わせの後にとうとうやってきた質問タイム!
「麻子ちゃん? **について正しく説明してください」
「もし飛行機がXXなったら?」
「お客様に〜〜と言われたら?」 
 
うっ…。
麻子は困った。一夜漬けのきゅうりは味けのないものだし
湯のないヤカンから出るものとはしれている。
え〜ぃ、とにかくゆっくり考えながら答えてしまえ!!!
「はい、それは… △して□を致します。
(深呼吸して考える時間を稼いでみる)そして…」
と言ったところで姉御先輩が優しく一言。
「いいのよ、緊張しなくて。ちゃんと言えてるんだから」
単に忘れ去っていたのにもかかわらず
緊張しているのだろうと優しい勘違いをしていただけ無事クリア。
そしてようやく初フライトへの飛行機へ向かうことができたのであった。
 
ゲート前、グランドスタッフの方が
ピアノを弾くかのようにキーボードを叩いている。
飛行機の中では繋ぎをまとった
整備や搭載の方が忙しそうに作業している。
窓の外にも麻子の乗っている飛行機の周りを走りまわる人。
航空券やツアーの販売から始まり、飛行機を一機飛ばすのに
何人の人が関わっているのだろうと麻子は思った。
気がつくと搭乗時刻が来てしまっていた。
麻子がぼんやりしている間に先輩が
すべて準備をしてくださっていたのだ。
 
「い、いらっしゃいませぇ〜」
訓練生バッチを胸にした麻子をお客様がチラリと見た。
「麻子ちゃん? 大きな声で堂々と言ってごらん!
 客室乗務員になりきらなきゃ♪」と姉御先輩。
ふぇ〜ん、いくら制服を着ていても今日から突然変異みたいに
客室乗務員になんかなれないよぉ〜、と思いつつ声を張り上げる。
「キミ、新聞をくれないかい?」とお客様。
「は、はひぃ〜」と麻子。
全員のお客様がお乗りになる頃には
麻子は一日分の笑顔を使い果たしていた。
 
くたくたになった麻子。
しかし、客室乗務員の仕事の一番の華と言っても
過言ではない肝心のサービスをせずにはいられない。
カートの準備を始める。お、お、重い。
お客様の前にカートを出そうとしてはみるものの
カートは言うことを聞いてくれない。
当たり前だが飛行機は動いている。しかも上昇中は坂道状態。
時折フワリとなる飛行機の中でカートを動かすのは
思った以上に大変だった。
 
訓練所の飛行機模型は傾いたり動いたりしなかったよ〜
と心の中で叫びながら先輩に手伝っていただいて
麻子はようやくカートを出し、客室という名の
晴れ舞台に出ることができたのであった。
 
先輩の飲物配りの術は早い。手裏剣を投げる忍者のようだ。
麻子が1列を終えた頃には先輩が4列目にさしかかっていた。
麻子は何をしても時間がかかる。
そして先輩は目にも留まらぬ早業で次から次へと作業を進める。
それも零れんばかりの笑顔と美しい動作で。
しまいには先輩が仕事をするのを
ポカンとみつめながら時間が過ぎていってしまった。
 
帰宅の途についた頃には今日一日何をしたのか思い出せず
フワフワする足取りで、ただひたすら真っ直ぐ歩くことしか
できないほどに疲れ果てていた。
こうして麻子の初フライトはとにかく終わったのであった。
 
 
 
 訓練所と訓練フライトの様子、いかがでしたでしょうか?
私にとって客室乗務員の訓練とは未知の世界であり
誰も知り合いが居なかったため
「とにかく大変!」という一般論的な噂だけを頼りに入社致しました。
実際に入ってみると、一社会人として働く仕事の一つであり
大騒ぎするほどのことではないと感じました。
ですが、何週間もの間「常に全力投球」で訓練に挑むには
自分の能力を超えていたように思います。
ですので、長距離を走るつもりで
長い目で無理せずに頑張ることにしておりました。
これからも仕事に限らず何事においても
誠実に懸命に、けれども時には肩の力を抜いて
その場をやり過ごせるくらいに頑張ることができればと思っております。
 



 

第90話 「PART 3」 -  14 Nov.2002 -


 
 2回に渡る短編小説、いかがでしたでしょうか?
クルーネットの主催者側の方からご好評(!?)いただけたので
引き続き小説家麻子として執筆活動(?!)させていただこうと思います。
今回は日々のフライトと、
客室乗務員になってから見る志望者の方について。
 
 

 少しは客室乗務員らしく振る舞えるようになってきた麻子。
搭乗時刻。化粧直しを終え、客室全体が凛とした雰囲気になる。
「おはようございます。本日も御搭乗ありがとうございます。」
「おぉ、お前は白くて綺麗な手をしとるのぉ。ウムウム。」
と、恰幅好く迫力のあるおじさまがおもむろに麻子の手をニギニギ。
ぎゃぁぁぁ〜、、、 凍り付いて声も出ない。
ギャレー(※)に飛んで帰って口をパクパク。 動揺を抑えつつ、
要注意旅客として他の乗務員に伝えるも手の感触が消えない。
はぁ、、、
 
気を取り直して挨拶続行。
パタパタ走るお子様。後ろにはお祖父ちゃま。
「おはよう!走ったら危ないよぉ〜。
 あとで玩具持っていってあげるから
 お祖父ちゃんとオリコウにしていてね〜」
と、チビッコは麻子を見るなり
   べろべろあっかんベェェェェェ〜〜〜〜〜
 
こはいかに!!! メイクバッチリ澄まし顔の麻子も負けじとタコ顔。
後ろでお祖父様が固まっていらした。
も、もうしわけござりませぬ御祖父様…。
会わせる顔もないのにコソコソと玩具を持ち寄る麻子。
チビッコは麻子の手を握りながら問いかけた。
「ボクのおうち、どこにあるとおもう?」
あぁ、同じ手を握られる感触もこんなに違うのね…。
子供って可愛い。麻子は心が洗われる思いがした。
 
帰りの便。心機一転、麻子は再び凛とした気持ちでお仕事開始。
ん?なんだか機内が明るいぞ?
そういえば今日は某航空会社の採用試験日。
「今から受けに行きます」という感じの方が数十人。
彼女らは乗務員を頭の上から足の先まで熱い眼差しで見つめる。
迫力おじさまと格闘し、ときにはタコ顔までする麻子も例に漏れず。
うひゃぁ〜、靴磨き忘れていたよぉ〜と、もつれる足も一挙一動。
 
しかし麻子は嬉しがり屋。タコだろうがイカだろうが、
こんなとき位は自分の理想の客室乗務員像を演じても許されるかな!?
受験生時代の理想だった姿になりきってみる。
そういえば私も飛行機に乗ったらクルーの顔を見つめていたなぁ。
今までにないくらい満面の笑みのサービス。
頼まれる飲物はスープ。 何故って?
それぞれの会社のオリジナルスープが飲めるんですもの。
 
「お仕事楽しいですかぁ〜?」と受験生の方。
「そうですねぇ〜♪」と満面の笑みで答える麻子。
私も忙しそうなギャレーに同じ質問をしに行ったことがあったっけ?
どの仕事も、どの学問も一言では語りつくせないのは当然のこと。
なんて答えにくい質問をしたんだろう。
かつて優しく答えてくださったクルーの方に心の中で謝る。
 あ! 私が話しかけたクルーの方は
機内の玩具をコッソリくれたっけ?
と、麻子は先輩の目を盗んでキャンディ小袋詰めをプレゼント。
お渡しに伺うとキャーーーーーと受験生の方。
 
三人組のお嬢さんが話そうと捕まえたのは、
普段からアッサリ元気にガハハという笑いの似合う姉御先輩。
客室乗務員としてのイメージを壊すまいと
必死になって頑張っていらっしゃる。
えれえれえれがんとぉ〜に繕う姉御先輩は
汗びっしょり、目が魚のよう。
 
帰り道。
「採用試験を受けてきましたぁ〜!!」という感じの人を発見。
なんで分かるのって? ピンクのワンピースに
ジュリエットのようなピンクのスカーフ、そしてお団子頭。
この髪型が決め手よぉ〜♪
麻子は自分を懐かしみながら彼女を眺めていた。
最寄り駅に到着。さて夕飯は何にしようと家路に向かう麻子。
ふと見るとその受験生の方は駅前の
レオパレスに姿を消したのでありました。
  え……   えぇ〜〜〜〜〜?!  もしかして、もしかして…
某社以外にも航空会社の募集ラッシュだから
ウィークリーマンションを借りて受験に備えているの?!?!?!?!
かつて自分も多くの会社を受けてはいたけれど…。
彼女のモチベーションの高さに驚異を感じながらも
仕事を日々の雑務のようにこなすようになりつつある自分を
省みずにはいられなかった。
少し申し訳ない気持ちになりながら
麻子はドアに鍵をさし込んだのであった。


※ ギャレー : 機内に数ヶ所ある乗務員が食事や飲物の
         準備をするスペース。 しばし避難場所!?としても使う。
 

 

 いかがでしたでしょうか? 
手握りおじさまに愛らしいアカンベ小僧。
機内サービスは毎回単純な流れ作業のように
見えるかもしれませんが、機内での出会いは
一期一会とも例えられるように本当に色々な方が
乗っていらっしゃいます。
ときに機内・外でお会いする客室乗務員志望の方。
つい、かつての自分の姿と重ねては自分が想像していた
客室乗務員像を守りたくなります。
 笑顔を求められる一方で疲れて声も掛けられたくない方
千差万別、十人十色。多様なサービスをご提供できればと
思う次第ですが、まだまだ未熟者の私。
なかなか自分の仕事の出来に満足できず
ときにお客様とお会いするのが嫌になってしまうこともあります。
サービス業とは自己嫌悪との戦いなのかもしれません。
 




 

第91話 「最終章」 -  21 Nov.2002 -


 
いよいよ私麻子のエッセイ担当も最終回になってしまいました。
航空業界を目指しはじめたばかりの方、
長年頑張り続けていらっしゃる方、
単に興味を持ってクルーネットを覗いていらっしゃる方
色々いらっしゃるかと思いますが、
今回は私が客室乗務員を目指していた頃のお話をしようと思います。


 
「就職活動の前に何かできることはないかな?」
大学3年生の春、麻子はふと思った。就職活動はまだ先の話であったが、
大学4年の先輩が次々と内定するのを見て軽い焦りを覚えていた。
 
「そうだ! 面接マナーを習おう!」
安易な発想で門を叩いたのは航空業界志望者の専門学校。少人数制。
元客室乗務員の講師陣からマナーを学ぶのが一番だと思ったからだ。
それまでの麻子は血色の悪い唇に色を塗るくらいで
お化粧をしたことがなかった。
メイクからマナーまで、麻子とは縁遠いものを
一挙に集中的に習うことができると思うと、
高い授業料も悪いものではないと思った。
ところが入ってみてビックリ、
周囲は「いとけさうじて」いる人ばかりだった。
化粧の「け」の字もない麻子は場違いな自分に居心地の悪さを覚えた。
「失礼いたします」 と満面の笑みで部屋に入る練習。
質疑応答を何問も考えては模擬面接に備えた。
今から思うと不思議な事をしていたようにも思える。
「クルーだけが進む道でもないしなぁ…。」
そう思いつつも、そこから得られるものは取りあえず吸収しようと
とにかく数ヶ月のコースを通い続けたのであった。
 
ながらく通っているうちにクラスメイトとの交流を通して
彼女らの航空業界を目指す懸命さに胸打たれ惹きつけられていった。
 
麻子は学生時代、目指していたものがあった。
しかし、残念ながら夢を諦めざるを得なかった。
その諦め以来、特に目的を持つこともできず
悶々とただ日常が過ぎていくだけの毎日であったため
目指すものを持つ彼女らが魅力的に感じたのであった。
 
「彼女らのように何かに懸命に打ち込みたい」
単純な発想かもしれないが
これが麻子が航空業界を目指すきっかけとなった。
そして合格までのNEVER ENDING STORY 始まりでもあった。
 
学生時代最後の年は航空業界に御縁がなかった。
外資系航空会社採用試験の駒を進めるが撃沈。
当面は他業種に就職して採用試験を受けようということにした。
それからは書類選考が進むか進まないかといった程度。
進んだとしても面接落ち。
スクールの友人全員が書類通過しても自分だけが落ちることもあった。
「何やってるんだろうなぁ〜」とボヤいてみる。
少しずつ仕事が楽しくなり航空業界への情熱も薄れてかけていた。
 
「もう受験するのや〜めた」
そう思った矢先に某社の募集が発表された。
「両親にも迷惑かけてきたし… 
 この会社は受けたことがなかったから、これで最後にしよう。」
口にするのは恐かったが、心の中でそう決めて応募した。
 
「この会社はこんな感じかしら?!」
何故か今までになく協力的な母は一緒にスーツ選びをしてくれた。
 
面接日。 「この方の下で働いてみたい!」
いつものようにノックして面接室に入室すると素敵な方が待っていらした。
「麻子さんは何故そのスーツを着てきたのですか」
今までになく自分が好きだと思えた面接官と質問内容。
不思議な御縁、母の愛情を胸一杯に感じながら試験に挑むことができた。
 
一人だけ書類通過できないこともあったような麻子が
初めてトントン拍子に試験の駒を進めていった。
 
そして、内定。
NEVER ENDING STORYがついに幕を閉じた。
少人数制と謳う専門学校のクラスメイトは
数年に及ぶチャレンジの間に半数が客室乗務員になっていた。
 
転職して1年後、最終試験まで共に挑んだ親友も他社に内定した。
挑戦しつづけて夢を実現したクラスメイト、
別の道に進んだクラスメイト、
それぞれが納得して歩んでいる今を知り
ようやく自分の中ですべてが終わったのであった。
 
 
 これまで4回に渡りお付き合いいただきありがとうございました。
麻子の日々、いかがでしたでしょうか?
まるで作家のように締め切りに終われながらの執筆の(!?)日々でしたが
こちらとしても楽しく連載する事ができました。
 最後に実際に就職してみて感じることをいくつか書かせていただきます。
ストレートに回り道をせずに入社している同期も大勢居る中で
遠回りをして就職した者としては…
一生懸命頑張っても無理なときはどうしても無理なことがあります。
肩の力を抜いたり、自分の心のなかで何かが変わったときに
ふと縁結びの神様(?!)が自分と会社を結びつけてくださったのだと思います。
 また、お客様は老若男女様々。
会社の中でも幅広い年齢の方たちと接していく、
ということを考えるとスーツ選びや面接に大きなヒントとなるハズ。
いかに綺麗か、目立つか、感じが良いかという以上に
仲間として一緒に気持ちよく働くことができるか、
人物本位の中にも会社を創りあげていく一人として
いかなる存在になることができるか
等々色々な要素が含まれるのではないかと思います。

 長くなりましたが、一足先に航空会社に入社した先輩からの
メッセージとして今までのエッセイがお役に立てれば幸いです。
最後にエッセイを書く機会をくださったCREW NETスタッフの皆様
麻子の暴走執筆にブレーキをかけながら校正してくださった
影武者さんにもこの場をお借りしてお礼申し上げたいと思います。
ありがとうございました。

 

 

essay@crew-jp.com

 

 

 


 



pacific ocean
( Photo by (c)chiaki )
 






= 第92話から第95話までの担当者紹介! =


某アジア系で現地ベースとして乗務している☆あき☆です。
今週から4回分エッセイを担当させていただきます。
飛び始めてやっと1年が過ぎたばかりのスチュワーデスです。

この1年本当にいろんなことがありました。
スチュワーデスになれてよかったなということもありますが、
本当になぜこんな仕事をしたいと思っていたんだろう・・
もうこんな仕事辞めたいと思ったことも数えきれいなぐらいあります。

これから4回分、この1年に起こった事を皆様に紹介していきたいと思います。
実は、あまり文章を書いた事がない私、みなさん、読み苦しいものがるかも
知れませんが、そこらへんは見逃してくださいね〜。



 

第92話 「修学旅行のお客様たち」 -  28 Nov.2002 -


 
最近の高校生の修学旅行はこんな国にも来るんだな〜〜
と思うぐらい、よく機内で修学旅行のお客様にお会いします。
また、最近の高校というのはお金持ちなんですね〜。
修学旅行のために5,6機、飛行機をチャーターして修学旅行に来るんですよ。
 
実は日本では良く見かける制服姿も私の住んでいる国には
高校生の制服などいうものは全くないので、現地クルーはいつも
驚きと感動でいっぱいのようです。
 
私の住んでいる国は冬はマイナス10℃にもなる街。
10月頃からもう街の人たちはみんなマフラーをしています。
そんな街に住んでいるクルーから修学旅行に来ている学生達を見ると、
スカートの短さが気になって仕方が無いよう・・。
 
いつも修学旅行のチャーター便で必ずクルーからいわれる一言が
☆そんなにスカートが短いと寒いから丈を長くした方がいいと教えてあげて!!☆
と・・・。
 
そして、ルーズソックス!!
これも本当に不思議で仕方が無いようですね〜。
☆みんなに、靴下がずれてると教えてあげて!!☆
って、いうんですよ。
 
確かにクルーの言うとおりです。
でもね、しょうがないんですよね、
その国にはその国の流行りと習慣があるから・・。
 
みんなさんも海外にいかれる時は
身なりにお気をつけ下さいね。
 
いくら日本で流行っているからといっても
実は一歩日本の外に出てしまえば
怪しい格好をしているだけかもしれません。

 


 

第93話 「スチュワーデス受験」 -  5 Dec.2002 -


 
実は私のスチュワーデス受験歴はとても長いんです。
短大生の時にはじめて受験したSQ。
SQに落ちて以来、幾度となく受験を繰り返しました。
受験をはじめて1年半が過ぎた頃、書類も全く通らず
途方にくれていた私は、留学する事を決意したんです。

留学を1年し、留学から戻ってきてから
BA,LH,TG・・・・・数え切れないくらい受験をしています。
留学から戻ってきて半年が過ぎようとしていたころ
このままでは合格できない!!とあせり始め、
ついに、ASに載っていた某スチュワーデススクールに通い始めました。

スクールにはいろんな方ががいて本当に驚きました。
元クルーの方、GH、帰国子女・・・。
このような方々と一緒に勉強していた私は
スクールに通ってもこんなにレベル高いの人達が受験
するのなら私はスチュワーデスになれないんじゃないだろうか?と、
毎日不安でしかたのない日々を送っていました。

スクールだけではきっと合格できないと思った私は、
英会話スクールにも通い始めたのです。
当時は、普段からもいろんなことに気を使っていましたね〜。
電車に乗る時は足をそろえて綺麗に座る練習、
友達と話しをする時でも、汚い言葉は使わないように心がけたり、
本当に日常の些細な行動に気を使いながら生活をしていたように思います。

そんな受験を意識しながら生活をして
約半年が過ぎようとしていた頃
やっと今の会社が私を拾ってくれたのです。
スチュワーデス受験をはじめてから三年半。
やっと私はスチュワーデスになることが出来ました。

最終までいって涙を流した事は数え切れません。
なぜ書類が通らないんだろうと悩んだこともあります。
このエッセイを読んでいらっしゃる皆様の中にも
スチュワーデス受験をしていらっしゃる方がいるかもしれませんね。
皆さんの中にもなぜ合格できないんだろうと悩んでいらっしゃる方が
たくさんいると思います。

でも、決して諦めないで下さい。
石の上にも三年。
必ず、自分の所に合格の通知は届きます。
(わたしは三年を少し過ぎてしまいましたが・・。)

実は現在乗務をしている私自身もまだまだ受験者なんですよ。
本当に入りたい会社に入れるまで私もまた頑張って受験をするつもりです!

みなさん、スチュワーデス受験頑張りましょうね。
 



 

第94話 「コンパ」 -  12 Dec.2002 -


 
はじめてのコンパ。
実は、高校生のころからずっと彼氏がいた私。
コンパというものに行った事がなかったのです。
学生の頃より、留学をしたくて仕方がなかった私は
当時付き合っていた彼に留学を反対されて大喧嘩をしたのです。
結局その時付き合っていた彼とは、破局。
それから、すぐに留学をして日本に帰ってきて1年後無事現在の航空会社に内定。
現在の航空会社に内定をしてから日本を離れるということもあり、
スチュワーデスの仕事に打ち込もうと決意。
また新たに出来た彼とも別れを告げ某国P市にやってまいりました。

トレーニングが無事終わり、
OJT真っ最中のある休日の日に先輩が開いてくださった
某国P市に企業派遣で来ている日系某商社の方々と
人生始まって以来のコンパに参加致しました!!!

はじめてのコンパ。
コンパが始まってから
何気なく挨拶をし、程よく楽しい会話を楽しんでいた私。
ですが、明日は3時に起きて4時半出勤のフライトを控えていた私は
10時前には帰ろうと思い、その場をさることにしたのです。

今でも忘れません、
最後にいわれた驚くべき一言。
お会計の時にお財布を出して一緒に払おうと思ったら、
☆スチュワーデスがお金を払おうとする姿なんてはじめてみた!!☆
って・・・。
そんな、払いますよ。
食事をしてるんですもの。

でも、その方々に言われた一言が、
☆OO航空のスチュワーデスは飲み会をしてもお金を1円も払わず、
食い逃げするってP市に来ている企業派遣の間ではすごく有名な話しだよ☆
と・・。
私達って一体・・・・。- -;。

いろんな方々に食事に誘っていただき、
いろんな方々とお食事をしましたが、
みなさん、口をそろえて言う言葉が
上のひとことなんです・・。

それとよく言われるのが、
☆スチュワーデスって、もっと高飛車で一般の人なんか相手にしないと思っていた
☆っと。

スチュワーデスだって一般の会社員ですよ。
自分で食事をした分ぐらいは自分で払いますよ。
それに、スチュワーデスは接客業です。
みんなフレンドリーでやさしい人のほうが多いと私は思います。

みなさん、スチュワーデスを誤解しないで下さいね。

 


 

第95話 「一番好きな時間」 -  19 Dec.2002 -


 
皆さんにも好きな時間ってありますよね。
好きなことに打ち込んでいる時ですか?
恋人と一緒にいるときですか?
それとも、買い物をしているときでしょうか?
 
私にも好きな時間があるんです。
なんだと思いますか?
きっと、私と同じようにこの時間が一番好きだと、
このように思われてるクルーの方は多くいらっしゃるでしょうね。
 
私は、スチュワーデスになる前にスチュワーデス学校に通っておりました。
その時の先生が、
☆スチュワーデスになって何がよかったかって言うと、
機内からみえる夜景がとてもきれいなこと。この夜景をひとり占めに
したいと思うぐらい本当に綺麗だったわ〜。☆
と、よくおっしゃっていました。
 
スチュワーデスになったら私も機内から夜景が見たい!!!
と,いつも思っていました。 もうおわかりでしょうか?
そう、今私が一番好きな時間は、機内からみえる景色を眺めている時なんです。
一番好きな景色は某国S市の夜景です。
機内から見える夜景をながめていると
仕事が辛くて辞めたいと思っても、
辞めたらこの綺麗な夜景が滅多に見れなくなる・・・
そう思うと、つらいことでも我慢できるんです。
本当に不思議ですよね〜。
でも、そう思えるぐらい本当にきれいなんですよ。
 
そして2番目に好きな景色はなんといっても日本人ならやはり富士山ですよね〜。
富士山が機内から綺麗に見えた時は
その日1日がとてもハッピーになりますからね 〜。
(私のように思ってる日本人スチュワーデスはきっと多いのではないでしょうか?)
 
3番目は雲ですね・・・。
雲はその日によっていろんな表情を持っているんです。
とても面白いですよ〜。
とくに夕暮れ時に夕日で真っ赤に染まった雲を見るのが一番好きですね。
 
クルー志望のみなさん、是非クルーになって一緒に
機内から見えるいろんな景色をみましょう!!
機内から見える、夜景、星空、雲、地上・・・・
全て本当に綺麗ですよ。
 
本当にこの仕事をしていてよかったと思えるひとときかもしれません。
わたしもこの時間を手放さない為にもずっとスチュワーデスでいつづけたいとも思います。
 
 
♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪♪
 

最後に・・・・・・・

私のエッセイを読んでくださった皆さん
本当にありがとうございました。
そして、今回エッセイの担当させてくださったN様、
本当にありがとうございました。

正直申しますと最近は仕事も忙しく、スチュワーデスになれた頃の喜びや
頑張ろうと想っていた当初の気持ちを忘れかけていました。

このエッセイを機会に、スチュワーデスになって
この1年間の想いを新ためて振り返る事が出来、
本当にとてもよい機会を与えてくださったと思います。

これからも頑張ってお客様のために乗務に励もうと思います。


 

☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆



次回の更新は来年1月9日の予定です。
皆様よいお年を! 

Crew Net

 




 



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