第161話から第164話までの担当者紹介!


みなさま、はじめまして。

私は外資系で、(嘘でない程度に)現役のフライト
アテンダントをしております、えー、マトリョ―シカ5号と申します。
本当を言うとスッチーではなくて、パイロットになりたかったような気もします。
もしかして機内食を作る会社に入るのも、今思えばかなり適正があるとも言えます。

飛行機と食べ物を見ていると、楽しくなる類の人間なのです。
ですから、人がスッチーという言葉を聞いてどんなイメージを持つのか、
正直恐ろしいと思っています。
貴重な機会なのでマトリョーシカ5号としては、
シュールな?「悲しい時!」を羅列してみよう、と思っています。
よろしくお願いします。


 

第161話ニホンゴ、デキマスカ? -  8 Jul .2004-


現在の職場・バラライカ・エアライン(もちろん仮名)では、
フライトが終わった時、デブリーフィングという名の反省会
のようなものがあります。
チーフパーサーが、皆を前にしてお言葉を述べるのです。

実は今は2社目で、以前の職場では反省会はありませんでした。
長いフライトを終えて、反省会をやっても感情的になるかもしれないし、
問題点を多角的に議論できるエネルギーなど、残っていないし
(忘れ物・なくし物もします)、第一バラライカ国ではヒラから上司に
何も言えないし。そうでなくても、いいアイデアが出たとしても、
覚えていられないくらい、疲れ果てているのが常なのです。

それでチーフパーサーはひととおり、彼女たちの母国語
バラライカ語で皆に何かコメントをした後、私に向かって
英語で言いました。(ちなみにブリーフィングという、
フライト前の打ち合わせも、バラライカでは彼らの母語でなされています…。)

「マト5号、あなたのニホンゴの機内アナウンスは、とても暗いわ。
もっとイントネーションをはっきりつけてちょうだい。」

それは現在の職場に移ってから、初めてのフライトでしたので、
何かミスをしなければいいな、と特に気をつけて働いたつもりでした。
飛行機を降りた後、空港出口に向かい歩きながら、
どういう意味でそんなことを言われたのか、考えてこんでしまいました。
うしろから、バラライカ人クルーたちが足早に寄ってきて
「あんなこと言われてたけど、気にしちゃだめよ!
あなたはよく働いていたわよ!彼女はニホンゴ、わからないのだし」
と、肩を抱きかかえられました。

んー、友達がほしくて仕事をしているわけではないのだけど、
もっとロジカルっていうか、説得力のあるお小言だったらいいと思うんだけどなー。
ばかばかしいけど、洗礼というものかな、新人みんなに言う
「新人さん、いらっしゃーい!」みたいな、お約束の冗談かなー。
いや、チーフパーサーはまじめな顔していたし。

くやしいのか、ショックなのか、未だによく判りませんけど、
「B社はこんなところか、へぇー」という、初めての経験でした。

 



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前回に引き続き、マト5号が担当させていただいております、エッセイの2回目。
今回は「悲しい時」の続編ですが、あまり毒々しいと性格も疑われてしましますので、
ちょっとトーンダウンしてみます。

 

第162話悲しい時 -  16 Jul .2004-


今日バラライカ国から日本へ到着したのですが、
実は定刻よりも1.5時間ほど遅れでした。
遅れの理由ははっきり言って機材の整備不良。
しかし不具合にもいろいろな種類があり、またお乗りの
お客様への対応があるものです。
例えばエンジンの不具合なら、本当にお客様も(クルーも?)
不安に思われますし、いくら時間がかかっても直さなければ、
誰だって出発すべきではない!と思いますよね。

今日の場合、お客様もほぼ完全に機内へ乗り込まれて、
管制塔へ離陸の許可を申請・許可され次第、ドアを閉めて
滑走路へと誘導されて離陸、となるはずのところで、
不具合が発見されました。

「あと20分で出発できる見込みです」
と機長からアナウンスがあり、
全て準備の整っている私たちは待機していました。
エンジンが回っていないと機内のエアコンも効かず、
サウナ状態に怒りだすお客様もちらほら。

その後情報の入ってこないことでお客様もクルーも、
多少疲れがでて「一体飛べるのかどうなんだ」と
思い始めてかれこれ50分位たったころ、
コミュニケーションシステムの不具合らしい、
ということが判りました。

機内ではクルーどうしの連絡をとる電話(インターフォン)があり、
これはまたお客様に何かをご案内するアナウンスをするのにも使われます。
電話くらいなんだ、早く帰国しないと商談に遅れるじゃないか!
と思われるでしょう?  でも、もしかして様々な万が一、
の場合が空港ターミナルを出発してから発生するかもしれません。
1秒を争うかもしれないこういった時に、いちいちクルーが大声を
張り上げてお客様に「○×してください!」というより、
アナウンスがあったほうが、はるかに効率がいいのではないでしょうか。
例えばね。

もしかしたら、スイッチの接触がイマイチなだけだったかもしれません。
でもこのような場合も、やはりエンジンがどうこう、とか
「実は消火器が飛行機に1本も載っていなかった!」
(そんな冗談はある訳がない・・・と思う)というのと同じく、
重要なことだったのです。

さて、結局「電話」は直って無事フライトできた(いや、それがさー、
また他にもフライト中いろいろ喜怒哀楽あったけど・・・)のですが、
それでマトリョーシカ5号が悲しいのは、バラライカ国の縦割り、
ボスには絶対服従という体質に起因する、対応のまずさだったと思います。

特に日本人は物を買うとき 「ナニでできてるか、どうやって洗濯するか、
もしどうにかなったらアフターケアはしてくれるのか」と、納得がいくまでに
幾重にも考えているようです。
きっとこれが世界でも有名な、品質管理の厳しさにつながっているのでしょう。
だからこそ、不具合があるといえば「どこがどうして不具合なんだ」
と思われて当然。バラライカ国民のように「何とかしてよー、しょうがないけど」
程度とは思わないし、事後説明が不十分だ、理由を言わないのはおかしい、
本当はもっと危ない理由だったのでは、と石橋を叩き壊さんばかりに?
エスカレートしていくことも、ままあることです。

バラライカ人クルーに「どうして出発が遅れているんだろう、
どこか飛行機の具合悪いの?」と尋ね、ようやく理由らしきものが
わかってきたところ、「お客様に聞かれたら、運航上の問題で、
と答えるように、本当の理由は言わなくてよろしい」と言われて、困りました。

運航上の問題、とは何でしょう?

管制塔からの離陸許可を待つ順番待ちだ、とか最後のお客様が
まだ到着されてない、とか、チェックインバゲージの中に、
本当は今日ご搭乗をキャンセルされたお客様の分が含まれていて、
それを降ろすのに時間がかかっている、とか。

とにかく「お客様には不安を与えたら失礼だ」という
考えから来ているのでしょう。でも、情報開示しないと、
某自動車みたいになるのになあ、第一バラライカ人クルーと
お乗りになっている大多数の日本人のお客様の板挟みになっている、
マト5号はどうすればいいのかしら。

本当は両方の橋渡しの仕事がしたいのにね。

 


 

第163話ゴハン、食べていますか? -  23 Jul .2004-


日本へ帰ってきて今頃の気候だとまず、アジア特有の暑苦しさ、
とりわけ湿気の重さが、疲労困憊の心身にこたえます。
ただでさえ健康管理が仕事の命(美容は二の次、それはマト5号だけか?)の
私たちクルーには、時差というものもかなりな負荷です。
時差がないと疲れ具合も違うのでは?と思うこともあります。

満席続きのきついスケジュールの頃、後輩の一人が
「どこでもドアがあれば仕事しなくていいのに!」と言っていました。
しかしこれはどうでしょう、そんなものがあったらギョーカイの存在自体
が不必要になり、「仕事がしたくてもできなくなる」のですけどね。
疲れると考えも支離滅裂になるものですね。

フライトで外地にステイしている間、クルーによって
いろいろな休養の仕方があるようです。
現地にいる友達と遊ぶ、買い物、ぶらぶら散歩。
かたや、ホテルでの一人きりを満喫したい、と
部屋にこもりきりでセルフエステ(髪を自分で
染めている人は意外と多い)、読書三昧・・・。

もちろん帰りのフライトに備えて休むことが目的だから、
基本的に社の規則内であれば、なんでもアリなのでしょう。
個人的に他人のウワサ話はNGとは思いますが。

食にこだわる(食い意地が張っている)マト5号は、
まず主に「食べて寝る」派です。
フライト後、ホテルにチェックインするやいなや、
自分の部屋で電気鍋で湯を沸かしながら、シャワー。
上がってくるとちょうどよいタイミング、S社の日本そばを一把投入、
アルデンテに茹で上げ、テレビを見ながらざるそばタイム。

今の暑さにはごまだれ冷やし中華もお勧めですが、
私はコンビニ飯やカップヌードルが苦手なのと、
おいしく食べるための一手間(ぐらい)はいとわないため、
めんどうでもこのようなことになります。
「マト5号の近くにいれば餓えることはない」と思われていたのか、
口コミ?で部屋に日本人クルーがやってくることも多々・・・。

ホテルからある時、「部屋で調理は禁止」と苦情が来ました。
電気鍋は調理ではなく加熱だと言い張り、更に堂々と
炊飯ジャーを持っていたのは反則でしょうか。
炊き込みご飯のレパートリーもかなりありましたが、そのうち
「おかずがないとさみしい、それにマト5号のメシ目当てのクルーもいるし。」
という事で、日本でフライトの前日、おかずを多めに作り、
弁当箱に入れて保冷剤とともに機内を経てホテルへ、
と発展していました。

ごはんに合うおかずだから味付けにメリハリがある(濃い)ため、
マイ・マグとワインやビールを片手に「おつかれー、今日ごはんなにー?」
と部屋に集ってくる同期・先輩などなど、飲むわ食べるわ!
「トイレ借りるよー」と声をかけられるのは良いほうで、
気づくと誰か一人くらいは私のベッドで寝息をたてているものです。

後日、ホテルの苦情はマト5号にあてたものではなく、
他のアジア人クルーに宛てたものだったことがわかりました。
本格派カレーはやはりフロア全体がにおう事になるので、無理だったそうです。

体調を崩した同僚へ、白粥の差し入れもでき、
そして炊飯ジャーは今も活躍中です。


 


 

第164話おねがいします -  29 Jul .2004-


先日のことです。
フライト前、ボスの一人から

「マト5号さん、この座席番号のお二人、もしかしたら旅なれて
いるのかもしれないのですけど、気になるのでケアお願いします」

と、報告を受けて機内に乗り込み、フライトはあわただしくも
いつものペースで進みました。

離陸してからの食事のサービスもあらかた終了し、
映画の上映も始まり、ひと段落ついたところでした。
依頼されていたお客様のことは、時折遠目に様子を見てはいたのですが、
旅へ行くというのに、楽しいのか不安なのか、いわゆる
「うきうきうっきー」度があまり感じられないのが、少し気になってきました。

タイミングもよかったので、声をかけさせていただきました。
こういったことも、はっきり言って出会いとか、運とかいうものかもしれません。

「実はね、今日成田へやってきて、カウンターで
今からバラライカ国へ行きたいのでチケット売って下さい、
といって乗ってきたんです。テレビで見て、行ってみたいなと思って」

要約すると、時間と予算は充分あるけれど、ガイドブックとホテル
その他旅のプラン全部はすべて空白、何も決めていない、
バラライカ語はおろか英語もできないと言うことでした。
いやいやー、なじょしっぺかー???
(※東北のとある方言で、どうしようか?という意味。)

マト      「バラライカ国に何日いたいですか?」

お客様  「何日必要ですか?」

マト      「ホテルは決めていないということですけど、どんなホテルがいいですか?」

お客様 「どんなホテルがありますか?日本語が通じるところがいいですね」

マト      「テレビで見られたのでしたら・・・どんな観光スポットが見たいですか?」

お客様  「何がみれますか?」


目は点をこえて砂粒になり、本当にどうしたらいいのか、途方にくれて10分・・・。
やはりマト5号といえども、ヒトサマのお世話になって今まで生きてきたわけで、
いや、根がバカ正直な時もたまにはあるのか、そのお二人はどうも
同じ日本人として放ってはおけないし。 こんな時にバラライカ・クルーは
「旅行会社のカウンター、到着したら教えれば?」位の、ありきたりのことを言うし。
だから英語もおできにならないのだと言っているじゃないか!
結局到着してから現地の友人に相談することにしました。

初めてバラライカ国を訪れる人で、どういう理由かはわからないけど
突然思い立ってやってきた。
あげく、言葉もわからない土地で万が一(絶対無い!とは日本でだって言えない)、
身ぐるみ剥がされて「バラライカ国はとんでもないところだ、二度と行きたくない!」
と思ってほしくなかった。 本当は悪い輩は少数で、言葉ができなくても
人の手を引いて道案内してくれることも、いまだに多くあるすばらしい国で、
ぜひとも「いいところねぇ」と思って帰ってほしかった。
理由はこんなところでしょうか。

到着してからバラライカ国で現地の日本語ガイドとして働く、
友人の友人Hをよびだし(ちなみにバラライカ国では2回あいさつをすれば、
その後は平気で友達呼ばわりされることがよくあります)、ホテルを予約し、
マト5号も同行して二人をホテルへ車で送り・・・
翌日ランチをとりながら、二人がどういう旅行がしたいのか、
話をきくことにしました。

結局、一人の日本語ガイドが始めから終わりまでつきっきり、
の二人だけのプライベート・ツアーを組んでもらいたい、ということになりました。
また友人ネットワークをたどって、二人の要望にそうことができました。
たまたま、マト5号の現地の友人は6人しかいないのに、
そのうちに適材がウマイこと含まれていたのが、幸いでした。

3週間弱の旅行を終え(その間1往復のフライトもマト5号は済ませ)、
再びフライトでマト5号がバラライカ国に到着するのを、二人は待っていてくれました。
ランチを今度はゆっくり一緒に食べ、みやげ物の買い物に付き合いました。

「本当に何から何まで、5号さんにはお世話になって、
ありがとうございました。もう、ガイドさんはきめ細やかな人を選んでくれたし、
ほんとに、気持ちのあったかい人がね、たくさんいました。
バラライカ国、最高ですね!ハマってしまいましたから、また来ます。」

「でも、もし成田にいらして飛行機の便が毎日あるわけじゃないですし、
もしフライトがなかったらどうなさってたんですか?」

「そうしたら、バラライカじゃない所に行っていたのかしらねー。」


マト5号はスッチーであって、本当は旅行エージェントみたいなことは、
する必要がなかったかもしれません。旅行は自己責任、飛行機を降りたら
後は地上係員にご連絡を、と言ってもよかったのかもしれません。
どうすればよかったのか、考えるとよけい解らなくなります。

少なくとも、楽しく旅行を終えられえ、つつがなく帰国され、
バラライカ国のファンを2名増やすことはできたので、
マト5号としては今のところ、すっきりしたつもりです。

 一応マト5号は日本人だけど・・・
「よろしくおねがいします」は微妙な表現で、
「どこまで」かは難しいですね。

 



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nagoya
( Photo by (c)Michelle )
 




第165話から第168話までの担当者紹介!


皆さん、はじめまして,
外資系エアラインの客室乗務員をしております「Emily」です。 
早いもので今年で入社10数年目?ですかー?と
他人に聞き直したくなるほど あっと言う間の10数年。 
アジアをベースにスチュワードの夫と二人の子供(娘8歳・息子6歳)
それに比人の住み込みの家政婦さんと猫一匹の
結構な大家族で暮らしています。皆さん どうぞお付き合い宜しく!!


 

第165話CAの時の流れ方-  5 Aug .2004-


もう、10数年目と紹介文に記したように、時の流れの速さが

あまりにも速く時々ついていけなくなります。歳のせいでしょうか? 
いや やはりCA(キャビンアテンダント)という仕事だからでしょう。 

私たちはロスターと呼ばれる毎月のスケジュール表を前月の中旬頃に頂くのですが、
・・・例えば 9月のロスターが8月の半ばに配られます。
それで9月のフライトと休みのスケジュールを知り、自分の予定をたてるのです。
毎日のように翌月のロスターとにらめっこし、何とか休みが
増やせないものだろうか・・・北米便は時差もきついし大変なので
ヨーロッパ便に誰か代わってくれないかなー(CA同志で交換可能)・・・
などの思惑で実際にフライトや休みを自分の都合に換えたりします。 

そんなこんななので頭の中で、勝手に翌月のフライトの
シュミレーションまでして・・きっとこのフライトはキツイ! 
この便は友達と一緒なので楽しくなりそう!
この休みで日本に帰ろうか、などなどロスターを眺めては
想像を膨らませ一喜一憂。 
ただの一枚の紙が数日で手垢でしんなーりしてしまう、そんな代物です。

ですからロスターがでるとすでに翌月を一早く疑似体験しちゃうんです。 
えっ?まだ8月でした?・・になります。 
そんな大事なロスターのお影もあり時間が速くすぎ去ります。
ただでさえ 私どもの記憶力が怪しいと実証されつつありますのに。
またうちの会社の場合、来年度の有給休暇などは
一年前に申請が始まります。年が明けたばかりというのに、
もう来年の予定を立てないといけません。
 
まして休暇は非常ーに大切なものでしょ! よーく考えます。 
約一ヶ月分の有給休暇を何回に分けていつ頃いただこうか? 
行き先の航空券も予約可なので、はて どこに行きましょう? 
全て一年後の事ですので、また想像して予定を立てます。 
・・・まだ今年の休暇が始まっていないという頃の話。 
常に先の予定を作ることを迫られる事が多きCAかな。

もうひとつの要因は飛行機に乗り、いつも場所と時間を
ワープしているからと思います。国際線CAなので、ひと月に
平均4−6カ国はその土地のベッドで寝ているでしょうか・・・。
ある時は大阪、ある時はスリランカ、またある時はアムステルダム・・・
自分の場合、ロスターでうまく疑似体験できてないと大変な
記憶喪失に陥ります!? それは、フライト先が未定地の場合。
例えば他のCAが病欠し、交代員として急きょ仕事に呼び出される時。 
自宅待機中、いわゆるスタンバイ。 
「神様、どうか、皆元気でフライトに行きますように!」 との願いは
はかなく会社からのリーン、リーンの電話と共に打ち消されます。

「えっー、今からトロントに行けー!えっ?もう、ブリーフィング始まっちゃってるぅ?・・・
そう、帰りは6日後なの・・(グスン)。 わかったわ、とりあえず ありがとう。」ガッチャン。 
会社のクルー・コントロールという部署から電話があるのですが 
彼らの命令は絶対なので拒否できません。 
でも いきなりトロントかい。 ねぇ、今寒いの?暑いの?・・ 
それを考えつつ スーツケースに急いで服をつめ込みます。
もう時間ないじゃんー、いざ出陣。
メンバーの名前も把握する間もなく身体は忙しく働きはじめます。

実は・・・自分は家であのまま子どもの帰りを待って一緒にお菓子を
たべるはずだったんだけどなー・・・と何度となくそういう未練が頭の中を巡りながら。 
そして慌しく一回目のミールサービスが終わり、はじめて、ほっと一息できる頃、
「あー、本当にトロントに呼ばれてしまったんだなー」という事実をかみしめます。 
あと5日は最愛の家族に会えないんだ。 
そして満席のフライトも13時間後にはエンディングを迎えます。 
ゾンビー状態でクルーホテルのベッドに傾れこむ至福の時。おやすみなさーい。 
・・・・・・・疲労は頂点に達しているのでその眠りの深いこと、深いこと。

Zzzzzz・・・・数時間後 ふっ、と恐る 恐る目を開けてみると・・
「ここは、どこ?」状態。 見慣れない壁紙、見慣れないベッド。 
どうやら自分の家のベッドではなさそうだ。 数秒、うろたえます。 
えーどこに呼ばれたんだっけ?と記憶の糸をたどっていきます。 
それからやっと現実を理解します。

でもたっぷり眠ったので気分は爽快! 
郷愁はそっちのけで 美味しい物を食べ、ショッピングを楽しみ、
現地の乾いた澄んだ空気 (香港は湿気が高いの) をいっぱい吸い込むと
本当ワープ状態。つい何10時間前、自宅に居た時はまさか自分が今こうして
仮にトロントの土地に出現しようとは想像もしなかった事。
その不思議に感動。 

そして6日後、予定通りにホームベースに帰港。 
数日ぶりの帰宅ですが・・・自分の中では長い間 家を空けていた感覚がない。 
お留守番組の子ども達は待ち時間の長さを実感するのでしょうが、
外に出て十分すぎる働き?をした私にはその時間が長いとは感じられず
いつもあっと言う間なんですね。

6日間のフライトでも自分には一回分=一日分くらいの感覚かも。 
だから 単純計算、月半分、仕事をしていると地上で働く人より
時間が倍の速さで過ぎてしまう。
・・・と分析してみましたが はたまた、CAの時の流れの速さは
ただの記憶力の衰えでしょうか??

 



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第166話夫婦フライト-  11 Aug .2004-


前回はCAの時間の流れの速さについて書きましたが 
今回はスチュワードの夫とのことについてお話しましょう。

彼は香港出身、同じ会社の同僚です。 
今年は記念すべき結婚10周年を迎えるにあたり彼について、
二人の関係を振り返れるエッセイが書ける機会に感謝したいと思います。 

実はついこの間 彼と一緒にフライトをした時のこと。 
うちの会社では各自、違うフライトスケジュールを持つ為
彼と一緒に仕事することはめったにありません。 
年に一回か2回でしょうか。 
それは南ア・ヨハネスブルグ便に一緒に行った時のことです。

アフリカ6日間の旅。 
ステイ先の遊びの計画はばっちりで、まだ彼の未経験である、
サファリ・ツアーをすることで決定。 こども達には
「ママとパパは お・し・ご・と・(強調!) でアフリカまで 
ちょっとサファリ旅行に行ってきまーす!」 と、説明。 
少々、ブ−イングでしたが気にしない。 

当日はエアバス機のファーストクラスを2人で担当することになりました。 
そうです・・・ここでお話しなければいけない事が2−3。 
優しい彼は私より年下、入社も数ヶ月後、ずっと私が先輩でした。 
ですがー、数年前に昇進システムがかわり、年功序列が廃止され、
能力制になって、この仕事を天職とするサービス精神旺盛の彼が
シニア・パーサーへと昇進したのは当然の事。 
私は置いてけぼりのジュニア・パーサーなので
彼の下で部下として働くことになったのでした・・・。 

これが全てよくなかった。 
実は家では思い切り私が幅を利かせ、仕切っているんです。 
彼は家でそんな私の事をSP2 (シニア・パーサー2=一番の仕切りや、
命令屋) と呼ぶ。当日はそんな家での立場逆転の元、 
飛行機は満席のお客様を乗せ 南アフリカめざし飛び立ったのです。

何も知らぬファーストクラスのお客様 対 シニア・パーサーの彼は
キャビン(客室)の花形。 スターに比べ私の立場は飯炊きの
ギャレー担当の裏方。 表舞台に立ちたい気持ちでキャビンに出ると彼は
 「君はギャレーにいてくれればいいから・・」と いつも私を奥へ引っ込めて、
キャビンは彼の一人舞台。 まさに花吹雪が舞っていました。 
彼はとびっきりのユーモアのセンスで人を笑わせ、人慣つこい、
超気配りの性格を全て発揮し ファーストクラスのお客様を魅了していたのです。 
あーあ、面白くなーい舞台の黒子にされた私。 

仕事はいつも分担しましょう と教わって普段は実践しているのに・・
今回、これでは彼の一人舞台!?せっかく久しぶりのファーストクラスで
働けると張り切っていた私はがっかり。 
超働き者で社交的な彼に殆んどの仕事をとられ、出番がない。
彼は彼なりのサービスのポリシーをもっているので、
他者には邪魔されたくないらしい。

しばし無能にされた私は耐え、たまに出るキャビンではにこにこ笑顔。
・・・でも 一反 ギャレーのカーテンに隠れると、たちまち険悪ムードがただよう。 
彼も私の不機嫌な態度に気ずいたらしい。二人で無言。 
つい 家に居る時の状態が出てしまうんですねー。 
無言でも夫婦だからツーカーかと思いきや、敵は何を考えているやら・・? 

普段、ミールサービスの仕事は同僚とのコミュニケーションと
チームワークが不可欠なんです。 特にファーストクラスは
フルコースでそれぞれのペースで食事をするので、各客人が
今、何を召し上がっているか、次のコースは何かなどを伝言しあわないと
サービスがうまく流れないんです。 
指示のない彼の独自のやり方は一緒に働くには本当にやりにくいんだなー、もう!!

もっと最悪なのは夫婦、なので互いを気遣うマジックワード
(ありがとう、すみません) が ゼロ!
何をするのも無言。よってサービスの流れを上手く把握できない
困惑と無駄な行動が増える。増してやキャビンではしっかり彼の
顔を立てていたストレスが頂点に達し、私は切れた。
そして、誰からも見えないようにギャレーのカーテンをぴしゃりと閉めてから・・・
小声で 「・・ちょっと、ヨハネスブルグに着いたら、覚えていらっしやい!!」
と 彼をビビらしたのでした。 
 
お願い、誰かー 私たちを止めて!(夫婦喧嘩) っていう心境。 
同じ飛行機の後方部にはあと10人もCAがいるというのに・・・
もう ふたりだけの世界は 限界!! 
もしも他のCAと3人でファーストクラスを担当していたら、
きっとそれなりに私も彼も気を遣いながら仲良く気持ちよーく
仕事が出来たんじゃーないかなー?・・・。 

それでも ヨハネスブルグ到着時には ファーストの
お客様方はサービスに十分満足していただいたご様子。
お褒めのお言葉を頂戴したので結果よかったとは思います。 
何より夫婦の失態がバレず、ほっ!安堵。 
ステイ中はまた会話もある仲の良い夫婦に戻り?
無事サファリ・ツアーを楽しみました。

えっ? 帰りのフライトですか? 
まあ、 それなりに お互い努力して無事 お勤め終了! 
やれやれ 同じフライトでも同じクラス担当するのは もう懲り懲り・・・ 
それから 家に戻ると いつものように私が 仕切る、
シニアパーサー担当になったのは言うまでもありません!

 


 

第167話ママクルー-  19 Aug .2004-


CAの第3回目の今回は ママ・クルーの事について書いてみたいと思います。
私には、スチュワードの夫との間に今年で8歳になる女の子と 
6歳になる男の子がいます。 この仕事に就いた20代はじめの頃には 
まさか自分が2児の母になっても、まだCA(客室乗務員)として空を飛ん
でいようとは、全く想像していませんでした。 

私が仕事を続けられるのも ここ東南アジアではごく一般的に
家政婦制度が普及しているお陰。 ここでは夫婦は共稼きが当たり前です。
社会での女性の地位は日本に比べて高いです。 
いわゆる、より平等に労働条件が整えられているのです。 
家庭内でそれを支えているのがフィリピン、タイ、インドネシアなどからの
出稼ぎの住み込み家政婦さん。多くの女性達が結婚後も社会で
活躍の場をもてるのはまさに彼女達の存在があってのこと。 

家政婦さんは比較的、安いお給料の上、住み込みで家事・育児の面倒を
全て引き受けてくれるので、外で働く女性達は家事をいっさいしなくてOK!
だから仕事をもっていても、自分の趣味や、子どもたちとの時間を楽しむ
余裕があるのです。 

うちの子どもたちは生まれた時から 両親が海外にでる留守の多い
環境の中で育ちました。 赤ちゃんの頃は言葉がしゃべれないので 
留守中の家の様子がわからなく不安ではありました。 
まさに 留守中の赤ん坊は人質状態・・?ですから、
家政婦さんとの信頼関係を築くのは最重要点。

自我が芽生える 2歳くらいの頃は仕事前、よく泣かれました。 
制服に着替え、かばんに荷物を詰めていると「ママがいなくなる」
と 幼い彼らも察知してぐずりだします。
当時、短パンしか履かなかった夫が長ズボンを履くだけで
「お仕事??」と 子どもに勘違いされ 泣かれた事も。 

普段は思いっきり母親業につかっていますが、これも3日続くと
「ちょっと ママを一人にしてー!」と ストレスがたまり始める。 
そして丁度次のフライトの日が来ます。 
準備をはじめると もう自分は職業婦人に変身。  
たとえ、さっきまで慌しく夕飯の準備やら子どもの宿題を見てあげていていても。 
いざ濃い目の化粧をし始めると気分は仕事モード。 
仕事前の化粧している自分は結構、真剣で殺気だっている。 
化粧をする=仕事、で どこか これから戦いに出かける気分になります。 
そんな私の怖い雰囲気?を子どもたちは敏感に感じてか 
もう誰も近ずこうとはしません。 

月に2−3本のロング便(欧米、豪州など)をします。 
殆んどが夜中発の便なので出謹は夜9時過ぎになります。 
その旅立つ時の心境は・・・重いです。・・・あと4−5日は
会えなくなる子ども達が急に天使に映る瞬間。特に寝顔は・・。 
しかし、行かねば! 外はどの家にも電気がついて夕飯後の
楽しそうな一家団欒の中、どこか私は世界で一番可哀相な
ヒロインを演じ後ろ髪がガーガオー引かれ、ゴロゴロと引く
スーツケースの重いこと・・・涙でうるうる景色がにじんじゃう・・

ところが いったん 会社に出社し 飛行機が飛び立って
しまう頃にはもう 気分は出来上がっている! 
えっーと、現地で何を食べようか?何を おみやげに買おうか? 
と忙しく想像が膨らみます。 
置いてきた子ども達についての不安や思いはいっさい消え、
現地ステイをどう楽しもうかーに尽きます。 
だって、考えたって心配したって もう海を越えているんですよー 
どうも出来ないでしょ! 

そしてステイ先では、家に居たら絶対出来ない事をして過ごすのです。 
それは・・・日本で買っておいた文庫本を読んだり、習いはじめた
語学のCDを聴いて勉強したり、エステでマッサージをしてもらったり、
美味しい物やショッピングを楽しみに街にでかける・・・ 
そして大事な睡眠をしっかりとる事ですかね! 

えっ? 残してきた子供には罪悪感ないかって?

そりゃあ、 現地でしっかり お土産を調達していますよ。 
まず 彼らの喜びそうなものを買う。それから 自分の時間がはじまります。
ママが家に帰ってきたことを知る子供たちは「ただいまー!」 と元気いっ
ぱいの声にのせ、「ママー!」 と走って来ます。 
よしよし、と私は待ってましたとばかり 大きく両手を広げ・・・ 

ところが、「お土産はー!?」と 
二人は私のスーツケースに一直線!! 
・・・皆さん、子供ってこんなものなんです。 
いくら過保護に心配しても つまらないですよ。
親も心得て、自分の時間を楽しみましょう。



 

第168話新人の頃・・-  26 Aug .2004-


誰でも 新人の頃には数知れずの不慣れな失敗談がありますよねー、
今回は そんなフレッシュな時代を思い出してみたいと思います。 

私が入社してすぐ 乗務についたのはロッキード社のトライスター機。 
当時は私の乗務はアジア路線が主でしたので飛行時間が短いフライトばかり。 
ミール(食事)サービスは着陸前ぎりぎりまで配り続ける事しばしば。 
正に機内では時間との一本勝負! 

まして新人の頃は ただただ慌ててしまいがち。 
お盆で運ぶ飲み物をつい、手で持っていって、案の定、揺れがきて 
お客様の頭の上からジャーッ・・・。
その場に立ちすくしてしまった私。 頭から水をかけられてしまった
年配の女性は怒らずに辛抱してくださったのだが、
回りのお客様がなぜか大爆笑。 
その事が余計申し訳なくて穴があったら入りたかったなー。 

新人の頃は一緒に働く乗務員は全員先輩な訳でその先輩方の
名前を覚えるのに必死でした。 うちの会社のクルーはアジア諸国から
集まっています。 毎回違う、クルーと働くのでそれは至難のわざ。 
ジャンボ機には17人−18人も乗務していますし、皆アジア人女性で同じ制服
同じ髪型・・・まあ、同じ体型?が多い中、手元の自分用メモには名前の横に
それぞれの特徴を書き込んで覚える ・・・おかっぱ、顔黒、緑のアイシャドー、
などなど名前と顔を一致させる為・・・

ブリーフィング前には全員に挨拶を交わすのがきまりです。
機内でも当然、互いのファーストネームで呼びあいますので
同僚の名前が覚えられない事には仕事どころではありません。 
乗務員リストには上の人から名前、国籍、が記載されています。 
それらを自分のノートにメモするのですが、アジア系の中国人たちは時々、
面白い名前を持っています。 
キティーちゃん、キャンディちゃん、などは可愛いですが、
ダイアモンドという名もあれば シンデレラという名を発見した時は、
いったいどんな人??・・・

また、ある時はリストの名前に日本人クルーのタマちゃんという子がいて、
まあ、猫ちゃんみたいだ・・・そして次が、ミケ。 
えっ! 今日はタマ と ミケ(猫&猫) と一緒に働くのー??
と感心したのも束の間。 
実はミケと読んだのは英語名の"MIKE(マイク)" でした。トホホ。

新人の頃って 仕事がわからず、とにかく無我夢中。 
でもそんな一生懸命さがきっとお客様にも通じているんだと思います。 
たいていの事は大目に見てくださいました。 
飲み物や毛布など頼まれてもすぐに忘れてしまう。 
余裕がなくて頭の中は、いっぱい、いっぱい。 
持っていっても広い満席の機内ではお客様を見失う事も多々ありましたなー。 
そしてなぜか、いつも到着してお客様のお見送り時に思いだすのです。 
「どうもありがとうございました。」 とご挨拶、 
(あっ、この人にビール頼まれてたの、忘れちゃった!)と 
こんな具合です。 スイマセン!

真さに失礼な事の連続で 周りの方にもずいぶんとご迷惑をお掛けしましたー。
振り返ると あの頃は毎フライトがとにかく新鮮でそして何かの失敗で
常に叱られていましたが、いつもお腹を抱えて笑えるような出来事でいっぱいでした。 
毎フライト感動の連続。 そこには誰かがいて自分を励ましてくれた。 
それは同僚であったり、お客様であったり・・いつも人に支えられてきました。 
その人たちはただ一度の出会いの人ばかり。 
機内での出会いは正に「一期一会」。 

私たちは一緒に働くキャビンクルーもパイロットも毎回違うメンバーで、
そして勿論お客様も違います。同じ組み合わせでフライトする事はありません。 
すごい出会いですよね! そう思うと この仕事は本当に素晴らしい!!
「初心」 をいつも思い出して頑張ります。
そして決して 新人いじめはしませーん!!

 



essay@crew-jp.com

 



 



contrail
( Photo by (c)Chiaki )
 



第 169話から第172話までの担当者紹介!


はじめまして
今回から4回を担当させて頂きます‘やべこ。’と申します。
現在、派遣社員で某航空会社で地上職をしております。
空港で働くようになってから早いもので5年経ちました。
空港と飛行機好きの戯言ですが・・、楽しんで戴けたら幸いです!


 

第169話おつかれさまです!-  1 Sep .2004-


私は現在地上職をしておりますが、

以前は飛行機の中の客室の清掃をしていました。

そう、あれは今日の日差しと同じ、あの夏の暑い日。
今から5年前の7月。未だ、高校生3年生でした。
空港デビューがこの機内清掃のお仕事でした。
飛行機の清掃には(他にもたくさんの会社がありますので、
私が働いていた会社でのおはなしです。)

飛行機が目的地に到着して、次の出発時刻の間の
準備時間までに行う、飛行間清掃(ターンアラウンド)と最終便や、
翌日の飛行機の出発まで使用予定がない機材を時間をかけて
清掃する、オーバーナイト清掃があります。
今日は、飛行間清掃のお話を少々・・。
 
初出勤の日。連れられるがままにつなぎに着替え、
作業のため飛行機に乗り込んだ私を待ち受けていた光景・・。
 
「・・なに、これ。」

繁忙期の沖縄便、満席のジャンボ機。
いつも旅客として目にする機内とは想像もつかないほどの汚さ!!
毛布は床やオーバーへット(頭上の棚入れ。)に散乱し、
シートポケットはごみだらけ。ぐちゃぐちゃになった新聞や雑誌。
お菓子の食べこぼし、あ!ジュースがシートにこぼれてる・・。
しかも、大遅延でイレギュラー清掃の指示が出されていました。
これを15分弱できれいにしてお客様を迎えるなんて、
想像もつきませんでした。
 
が、しかし15人くらいが1チームとなり、各自ポジションに付き、
座席のセット(機内誌や安全のしおり、エチケット袋)を直し、
ないものは補充。 ごみ、イヤホンの回収やギャレーや
ラバトリー(化粧室)の掃除、テーブルを拭き、
汚れたシートカバーの交換に、ヘットレス(座席の頭の部分
に付いている紙?のようなもの。)交換、窓を拭き、毛布をたたみ・・。
500席余りの機内が見る見るうちにきれいになるではありませんか・・。
まるでビデオの早回し。(大げさだけど、初日、本当に感じました。)
 
でも・・・。
何に一番感動したって、機内に乗務されているクルーの皆様。
制服を身にまといながらも、私たちに協力していただき、
クルーミールも食べかけのまま毛布をたたんだり、
「何かお手伝いはありませんか?」と声をかけてくださったり。
 
その中でも忘れられないことばがあります。
MayRTN(メイリターン:目的地の天候不良などで、
引き返しの可能性がある条件付きの運行)のかかっている
便の機内清掃に入った際、必死に清掃してる私たちを見て、
お手伝いをしてくださったキャプテンのお言葉です。
 
「Shipはひとりで飛ばしてるんじゃない、みんなで飛ばしてるんだ。
 誰一人欠けても飛行機は飛べない。」
 
強いまなざしと、お言葉に、胸が熱くなった瞬間でした。
これだから、やっぱり空港での仕事は辞められない!
顔が見えなくても、今、この瞬間どこかで飛行機を
飛ばそうと頑張っている皆さんがいるから!
 
また次回もよろしくお願いします!やべこ。でした!
 



essay@crew-jp.com

 


 

第170話ドラマ-  10 Sep .2004-


皆様こんにちは、やべこ。です。早いもので9月ですね。

日中の暑い日差しの隙間に涼しい風を感じてちょっと嬉しかった今日です。
今回もお付き合い、お願いいたします!

空港で働いていて嬉しかったこと、それはもちろん大好きな
飛行機がそばで見れること。(ちょっとマニアックです。
好きな飛行機があるのですが、それが見れたときはひとり歓喜!)
電線に邪魔された狭くて苦しそうな町並みから外れ、
贅沢な真っ青な空を独り占めできること。
大切な仲間と大切な場所で仕事をして、笑顔を交わせること。

今のお仕事は地上職の方の一部の業務のお手伝いなのですが、
一部と言えども感動することがたくさんあります。
お急ぎのお客様、チャーミーグリーンのCMのようなラブラブ(?)な
老夫婦のお客様、お子様1人旅のお客様。
みんな、みんなドラマがあります。

清掃の仕事だってただ、掃除しているんじゃなくて
感動してしまうこと、悔しかったこと、あります。
忘れもしない、半年経った冬の日。
ジャンボではなくエアバスA320型機の清掃に4人で取り掛かっていました。
夜間の清掃だったので比較的時間もあり、いつものようにシートに座り、
飛行間より丁寧にシートポケットを掃除していたら、
お土産袋と共に、メモ紙に書いた手紙が出てきました。
勝手に読んではいけなかったと思いましたが、
お忘れ物の報告もあるから・・、と見てしまいました。

内容は、「楽しかった、また、みんなに会いに行くよ。」
里帰りに利用していただいた学生さんのものでした。
機内では色んな思いを持った方が搭乗しているんだな・・。と
そのとき改めて思いました。

自分が旅客として搭乗したとき、シートポケットがミスで
清掃されていなかったのを見て、げんなりしているお客様を
目の当たりに。ショックだったこともしばしばありました。
ギャレーの清掃が行き届いていなくて、クルーの方が
文句を言っているのを聞いたこともありました。

お客様から直接機内の状態のご意見を聞く事も術もないので、
ついついただきれいにすればいいや、という業務の上で
しか仕事をしていませんでした。飛行機に入って感動して泣いたことも、
お客様に気持ちよく飛行機に乗って頂くことも、全部、全部忘れていました。

そこから、意識が本当に変わりました。
シートを見て、楽しい旅行だったのかな?
仕事、うまくいったのかな?そんな風に仕事をするようになりました。
これから出発される方に、よい1日になりますように、と
願いをかけながら清掃していました。
なかなか見えないところですが、そんな風に見えないところで
お客様を気にかけているスタッフが居る事、
飛行機に乗るとき、ちょっとでも思い出してくだされば幸いです。

そして、今日もお客様ひとりひとりのドラマを大切に、
業務にあたることを忘れないようにと改めて思いました。
これを読んでくださった方と、偶然お会いできたらうれしいな・・。

それもまた、ドラマ・・。

今回は長くなりましたが、次回も宜しくお願いいたします!!



 

第171話進んで行くあなたへ。-  16 Sep .2004-


「おつかれさまでございました。
  ご搭乗ありがとうございました。
  お気をつけていってらっしゃいませ。」

お客様にかける言葉。

「おつかれさま!今日は何時まで?ガンバローね!!」

笑顔ですれ違った仲間と交わす何気ない言葉。

玄関を出て、空を眺める。
深呼吸。
今日も青い空。
飛行機が見える。

早く行きたい。
飛行機のいる場所。

早く行きたい。
働いてるあなたの見える場所。

早く行きたい。
今日出会える人たちがいる場所。

飛行機は自力で前にしか進めない。
ふと飛行機たちを見て思った。
飛行機のように、後ろ、振り向かずに前だけ見て進もう。
前だけ真っ直ぐ向いて。
前だけ向いて勇敢に進んでいく飛行機を見ていたら思わず泣けてきた。

今日、一日過ごして思ったことです。
沢山のお客様の旅のお手伝いが出来たこと。
通路ですれ違った仲間と交わした一言と笑顔に胸がじーんとなったこと。

たまにはこんな風に思える日があっても良いですよね・・・?
いつもいつもこんな風に感傷的になってられないけど、たまにこんな風に思えたら
繰り返しの業務じゃなくてきらきらひかる自分に出会えるはずです。
些細なことにヒントって沢山かくれんぼしてるから・・。

業務のお話から少しブレイクです。
次週で最終話です。個人的な主観ばかりで、すみません・・。
もう1話、気合入れて臨もうと思います。宜しくお願いいたします!!

やべこ。でした。

 


 

第172話たくさんの笑顔を。-  24 Sep .2004-


こんにちは、やべこ。です。
いよいよ、(私の中では。)最終話なんですね・・。
なんだか感無量です。
そんな心境ですが、頑張って勤めさせていただきます、最終話!

今日もたくさんのお客様がご搭乗していかれます。
「お気をつけて行ってらっしゃいませ。」とよい旅に成る様、
お祈りするのはいつもの事ですが、最終話の今回は、
新たなる旅立ちの場でもある(大袈裟!?)
到着ロビーでのお話でもしようと思います。

出発やゲート業務は地上職のお仕事として、
ご存知の方は多いのではないでしょうか?
勿論到着ロビーでのお仕事もあります。
主には、手荷物をお預けになられたお客様への引渡し
(クルーの方も荷物を引き取りにいらっしゃいます。)、
“手荷物照合”です。他には、機内持ち込み制限品=刃物類や
機内に持ち込めないものの物品の返却や、バスや空港施設のご案内、
他社便の到着、出発のご案内。

結構会社のこと以外もたくさん聞かれるのです。
インフォメーションセンターのよう・・。
それに忘れてはいけない!いつもShip Sideで頑張っておられる
グランドハンドリングの方との連絡。(これから手荷物流しますよ!ナドナド。)
もしも機会がございましたらよぉーく見てください。

到着ロビーでのお仕事と云えど多様なんです。
やべこ。自体が何でも感動してしまうたちなので、この業務をしていても
案の定沢山の感動をしました。仲間の行動や、お客さんの再会シーン。
勿論、嫌な事も。こっちが泣きたいよぉー!という内容のクレーム・・。

ひとつ、自分にとっての≪思いやり≫の概念を覆されたお話をします。

お客様の手荷物も全て引渡しが完了、さてさて次の業務に行くか!
と気合を入れていたところ、一人のご婦人が
「うちの主人、いなくなってしまったの・・。」
と私に話し掛けにいらっしゃいました。
ご主人さまは少し痴呆気味、足腰も杖なしでは歩けない状態。
全館放送やお声がけをしても全く現れません。
ロビーのソファーにお座りいただいていたのですが、
改めて目線をご婦人と合わせご主人の特徴を尋ね、
広い空港を片っ端から探すことにしました。
「○×さま、いらっしゃいますか??」
電車のホームや近くのレストラン。
全くご婦人から聞いていた特徴の男性はいらっしゃらない・・。

どのくらい探したのだろうか・・。
到底足腰の弱いご主人が歩くにはさぞかし疲労困憊だっただろう、
全く反対のロビー前のソファー。
他会社の職員と何やらお話されている様子。
ピッタシ!そう、聞いていた特徴通りの男性がいるではありませんか!!
ご主人の手を引いて、昔話を聞きながらご婦人の待つロビーへと向かいました。
ご婦人はロビー前で立っていらっしゃったのですが、
遠くに見えるその姿を見るなりご主人、硬く握っていた私の手をぱっと離しました。
一言。「これを見られてはいかん!!笑。」
思わず笑ってしまいました。

ご婦人と無事に会えたご主人。
ご婦人、怒ることなく何も口にせず只々ご主人を見て微笑んでいました。
とっておきの笑顔で。しばらくして「おかえりなさい。」とだけ口にして。
心からの笑顔で、心からのおもてなしの気持ちで。
心から何かをすることこそ思いやりに繋がるのかな・・。
ついつい相手の心を推察しすぎて、から回りの私の思いやりでした。
(あてつけやお節介だったかも・・。)
このお二人を見て学んだことです。今はまだ、上手く出来ないけれど・・。

沢山の方と出会える事で、なりたい自分が沢山見つかりました。
なりたいな・・。がいっぱい!お客様だけではなく、出会う全ての
人々に心からの笑顔で。私の教訓です。

この場を与えてくださった現役外資系FA様。
書くことの楽しさを教えて頂いた事にありがとう。
そしていつも笑顔で業務出来ること、あなたたちのお陰です。
同僚たちにありがとう。誰よりも何よりも飛行機が好きなMさん。
きっと今日もみんなの為、ShipSideを駆け回っていることでしょう。
そんな姿勢には本当に頭があがりません。
単調な毎日に色を付けてくれたこと。ありがとう。

そして最後に。お付き合い下さった皆様、本当にありがとうございました!
どこかでお会い出来ていると信じて、今日も前だけを向いて、
飛行機と仲間と共に頑張ります!

やべこ。でした。
 


 

 



 



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